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「デキる上司は休暇が長い」
小松俊明 著 (あさ出版)


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転職情報誌【タイプ】 2004年3月号

Type版「マネーの虎」 社長、僕を買ってください!

買う人
藤巻幸夫氏
福助社長。伊勢丹で「解放区」などのセレクトショップをヒットさせたカリスマバイヤー。 バッグのキタムラ常務を経て福助の再建に挑んでいる。

齋藤正勝氏
カブドットコム証券代表取締役。証券子会社のSEから同社設立。昨年、前年同期比20倍の増益を達成。現在、東証への直接上場の準備中。

小松俊明氏
ハドソン・グローバル・リソーシズ 消費財&インダストリアル部門代表。住友商事を経て現職。多くの実績をもつヘッドハンター。

パート1
売り込む人
大木和仁氏28歳・仮名

都内有名国立大学社会学部卒。大手国内系証券会社入社。ベンチャー投資部門で様々な未公開企業への投資業務に携わる。 2年後に現在勤務の上場IT会社に転職。新規投資案件の発掘および新事業の企画・事業開発などを担当している。

大木 よろしくお願いします。私は証券会社のベンチャーキャピタリストを経て、 現在の会社に投資担当として入社しました。今は、投資子会社で投資先の発掘やインキュベーションなどを主に行なっています。 将来的には投資家になるのが目標ですが、その資金稼ぎとビジネスマンとしての強みを作るために、 社長の右腕として働きたいと思い応募しました。

齋藤 これまで随分ベンチャー企業への投資をやってきたんですね。 自分で会社をやりたいと思ったことはないの?

大木 考えたことはありますが、 小資本で会社を立ち上げてもリスクの割にリターンが少ないという現実を多く見てきました。なので、 今は会社の中で事業を立ち上げてみたいと思っています。最終的な目標は、人の資産ではなく自分のお金で投資できる投資家になることです。 ですが、投資する起業家に「役立つ人」と思ってもらえないと投資家として成功できません。そこで、何らかの価値を身につけたい。 そう考えているところです。

齋藤 いや~。君はしっかりしている。28歳で、すでに悟りきっちゃっていますね(笑)。だけど、 自分のカネで投資していないことに変な罪悪感を持つ必要はないんだよ。会社のカネで投資して何が悪いの。でも、 僕の会社は今上場を前にしていて、君みたいな人、欲しいんだよね。ビンゴって感じ(笑)。

藤巻 う~ん。僕から見ると、君はあまりに綺麗なキャリアを歩んでいる感じがして、 実のところ何がやりたいのか見えない。たとえば、僕は破綻してしまった福助をなんとしても立て直したいという志をもっている。 知り合いの起業家もみな、「これがやりたいんだ」と明確な夢や強い情熱を持っています。君からは、なんだか情熱が感じられないんだよね。 頭が良すぎるんじゃないの(笑)。

齋藤 確かに、君は40過ぎのオッサンみたいだよ。

藤巻 そう。なんかこう若い人特有のエネルギーがないんだよね。

小松 大木さんは論理的でクレバーな人ですよね。まだ20代なのに実にしっかりしている。 僕が20代で総合商社にいた時は、「入社後3年間は頭を使うな」と言われていました。実際それでひたすら営業に走り回っていたのですが、 仕事で出会った中小企業のオヤジには大きな影響を受けましたね。彼らの持つ情熱はスゴイと。大木さんも、 これからそういう出会いがあるでしょうね。ところで、経営者の右腕になりたいということですが、「こういうボスだったらやっていけない」 というタイプはありますか?

大木 情熱がないと言われてしまいましたが、私もたまには熱くなるときがあります。 「それはおかしいですよ!」と。そういうときに、後々まで「あいつは反発した」という感情をずっと引きずるタイプの上司は苦手です。

小松 もし藤巻社長が、そういうタイプだったら、どう対処しますか?

大木 我慢はしません。仕事上のことで我慢すると、いい仕事はできませんから。

藤巻 その意気込みはいい。見直した。

齋藤 ところで、社長の右腕って具体的に何をする人というイメージなのかな? 秘書的な人、 経営企画する人、それとも副社長? 

大木 色々な切り口があると思います。でも私が思う、“理想の右腕”は、 重要な商談が同じタイミングに2件入ってしまった場合、自分が片方出られなかったとしても、 自分と同じように商談を漕ぎ着けられる人というイメージです。

齋藤 う~ん。イマイチ何をもって役に立つのかがわからない。とどのつまりは、君は何がやりたいの?

大木 今やりたいことは、事業を立ち上げることです。

藤巻 どんな事業?

大木 正直、今の私はまったくのゼロベースから、ビジネスを立ち上げるだけのアイディアはありません。 でも、すでにネタのあるものを大きくすることはできると思っています。

齋藤 つまりオペレーションに落とし込む能力、実行能力はあるわけだね。

藤巻 ネタは何でもいいわけだ。経営者を信じて事業を育てると。実は僕、今そういう人がほしいんだよ (笑)。

齋藤 危惧するのは、このままいくと立ち上げ屋さんで終ってしまうということだね。

藤巻 だから、事業会社に入って3年間くらい苦労したほうがいい。MBAをもっていても、 実業で苦労していない人はまったくツカエない。実は君も、理論重視で手は汚したくないタイプなんじゃないの?

大木 そんなことはありません。実は35歳になったら経営者になることが目標なのです。でも、 現状では人を動かした経験がない。ベンチャーキャピタリストは一匹狼スタイルですから。一人で仕事が完結してしまうんです。本当は仲間と “やったね!”と成果を挙げた喜びを分かち合いたい。

藤巻 君はもっている資質とやっている仕事に乖離があるんだよ。

齋藤 経営者になりたいと急ぎすぎている感じがする。でも、 いまは自分をバージョンアップさせるいいタイミングだね。

小松 最後に、自分の適性年収はいくらだと思いますか?

大木 だいたい年収800~900万円くらいでしょうか。〆

藤巻幸夫氏(年収450万円+α)
事業を任せて3年後に実績を出せば、この額の3倍にします。最初から甘い汁を吸っちゃうと、いい仕事ができないというのが僕の方針です。

齋藤正勝氏(最低保障年収640万円)
月給40万円で換算しました。28歳でこの金額なら親や同級生に話しても恥ずかしくないはず。当社は大半がインセンなので、 成果を出せばもっと高くなる。

小松俊明氏(年収700万円+成功報酬)
経験4年で社長室か経営企画という職種で考えるとこの金額です。ただ、成功報酬があるので期待値通りなら1千万円に届くパッケージです。

自己評価とのギャップ
今回、藤巻社長および齋藤社長が下した年収は大木氏の自己評価額を下回る結果となった。しかし、 両氏とも数年後に成果を出せば1000万円を超えると明言している。資質は高く評価されたものの、 年収はあくまで実績ベースというのが実態のようだ。ヘッドハンター小松氏は、 「28歳で大手商社やメガバンク勤務だと残業込み固定給は700万円位。その人が外資系に転職
すると、600~800万円位の固定給が今の相場です」。藤巻社長の提示額より高いが、 外資には期待通りの業績を出せないと翌年の雇用はないという厳しい現実もある。


パート2
売り込む人
吉田友一氏 26歳・仮名

名門私立大学経済学部卒。大手銀行入行。財務アドバイザリー業務を経験。1年後に外資系ITファームに転職し、 ERP導入プロジェクトに携わる。その2年後に、知り合いの社長に誘われソフトベンチャーに転職し、現在に至る。

吉田 私は日本の金融界を変えたいとの思いをもって新卒で銀行に入りました。しかし、 上司に意見すら言えない現実に幻滅し、退社を決意。専門性を身につけたいと第二新卒枠でITコンサルティング会社へ転職しました。 (2年間に携わった10個のプロジェクトの概略を説明)。そして昨年、知り合った起業家のビジョンに感銘を受け、 立ち上がったばかりのソフトウエアベンチャーに転職し、今は商品開発と導入のプロマネに従事しております。将来は経営者が目標です。現在、 自分の可能性をより広げられる会社を探しています。よろしくお願いします。

藤巻 ITコンサルタントとして多くのプロジェクトを担当したと。それで、 君が出した一番の実績というと何になるの?

吉田 顧客の心理的抵抗感を押さえながら、新しい事業をドライブしたことです。

藤巻 それってどのプロジェクトのこと?

吉田 前職時代にある企業で情報プロセスの改革プロジェクトを担当したときのことです。 クライアントが大きな問題点を抱え、新しいビジネスと業務のやり方の変更を検討している中、解決策を見出し、実行を支援しました。

齋藤 大手のコンサルティング会社から、今の小さなベンチャーに転職した理由は? この会社が有望だと確信したの?

吉田 いえ、むしろこのビジネスは難しいと思っていました(笑)。しかし、社長のビジョンに強く惹かれ、 入社を決意しました。

小松 短い期間のプロジェクトを回すことを2年もやっていると、 自分もコンサルタントではなく当事者になりたいと自然に思うはず。そこで、社長から“一緒にやらないか”と声を掛けられたら、 やりたいと思いますよね。

吉田 ええ。素晴らしい経営者を見ると、アイディア感覚と計数感覚が両立した人が多い。 そういう人を目指そうとしたとき、事業会社で泥臭いことをして、汗をかく必要があると思ったわけです。

小松 いまは小さいながらも経営の意思決定の場にいて、やりがいもあるのではないでしょうか。 それともやりたいことをやろうにも予算がなくて大変だから、内心コンサルタントに戻りたいのですか?

吉田 コンサルタントは確かに格好いいイメージがあり、世間体はいいと思います。一方、 今の会社の現場は厳しい。でも、その分ビジネスとは何かがよく見えます。だから、コンサルタントに戻る気はありません。

齋藤 吉田さんがもっとも得意なこと、人に負けないことってなんですか?

吉田 正直「これだけは誰にも負けない」という得意な分野はまだありません。ただ、 どんな分野でもトップから指令が来たら、何が目的で、現状で何が足りないか、自分に何が期待されているかを確認することはできます。 コミュニケーション能力、目標設定能力、スケジュール管理では人に負けない自信があります。

小松 しかし、コンサルタントはある程度になると、金融や情報通信など得意分野を作ります。
吉田さんもこれから得意分野をこれから作っていったほうがいいですね。

藤巻 ところで、これまで仕事に情熱って感じたことありますか?

吉田 あります。

藤巻 やりがいを感じたことは?

吉田 あります。

藤巻 う~ん、それがどうも伝わってこない。なぜだろう?

吉田 コンサルタントをしていたせいだと思いますが、何事も客観的に話すクセがついているもので。

藤巻 冷静なのはいいけど、それを打ち破ろうという気はあるの?

吉田 はい。課題だと思っています。

藤巻 本当にIT業界から離れてもいいと思っているの?

吉田 業界にはこだわっていません。人々の暮らしに欠かせない衣食住の分野を、 将来的には手掛けたいと思っています」。

齋藤 具体的なジャンル、興味というと何になるのですか?

吉田 分野でいうと、外食産業かアパレルです。この分野で経営者として、 これまでにない新しいブランドと価値観を提供していくことが将来の目標です。

小松 吉田さんの話は論理的です。しかし、 ビジネスの世界では業界に特化して成果やネットワークを蓄積する必要がある。そして、 実際に客を引っ張ってこられるくらいの具体的なタマが出せないと、話に説得力がありません。ディスカッションだけなら、 賢ければ誰でもできます。

吉田 今はナリッジのBtoBにビジネスに興味があります。だから、 この分野は特化して先端の知識を蓄積しています。

小松 そうというなら、そこを生かして売り込みたいですね。そんなに詳しいなら、 君から買いたいなと思われないといけません。すると、自然と将来像が見えてきます。

吉田 いまやっている企業向けソフトウエア市場なら、この分野が有望そうだと日々考えています。しかし、 それをビジネスにするのでなく、他の分野で新しい価値観を提供したいのです。

小松 その分野の話が専門性の高い社長さんの前で、説得力があるかどうかは疑問です。 吉田さんは下働きとしては、プロセスを踏んでモノゴトを理論的に考えられる人として優秀です。しかし、業界のことを何も知らないと、 優秀な経営コンサルタントでも採用しにくいのが実態です。今後、目当ての業界で実績を積んで社長に肉薄する迫力を身につけてほしいですね。

齋藤 将来、社長になりたいということですが、吉田さんにとって良きリーダーシップとは何ですか?

吉田 様々なリーダー像がありますが、私が目指しているのは卓越したコミュニケーション力がある人です。 つまり、現場の言葉の声を咀嚼して、あなたは何をするべきかをうまく部下に伝えられること。それがリーダーシップだと思います。

小松 最後に、自分の市場価値はいくらだと思いますか?

吉田 IT業界だったら、年収600万円程度だと認識しております。〆

藤巻幸夫氏(年収420万円)
月給20~25万円。ウチの現場で鍛えさせたいね。鍛えれば将来CFOにでもなれる人。現場で叩き上げた仲間と飲む酒は格別にうまいよ(笑) !

齋藤正勝氏(最低保障年収592万円)
彼にお薦めするのは、今の上司である社長と一度真剣に喧嘩してみること。自分はこれだけは譲れないということを貫き通すと一皮剥けます。 喧嘩して傷を負ってから、ウチに来るといいよ(笑)。

小松俊明氏(年収560万円+成功報酬)
この経験4年と年齢からの平均値です。成功報酬で期待通りの成果を出せば700万円。いい目標を設定してもらえば実力を発揮できるでしょう。

自己評価とのギャップ
藤巻社長の下した額は、吉田氏の自己評価額よりもかなり厳しいが、採用には前向きだった。藤巻社長も齋藤社長も、 現場感覚がうまく表現できない、理論先行という印象が気になったよう
だ。これに対し、ヘッドハンター小松氏は、「経営者の方は自身がとことん苦労しているから“ナマ傷”を負っている若手が好きなのです。 だからといってワザと失敗する必要はないのですが、仕事は一生懸命やれば必ずナマ傷がつくもの。 自分はこんな大失敗をしたがそれが今の自分の力に繋がっている、と謙虚に話せれば、人の心に響く会話ができるようになります」。

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